2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
「財源=税」問題を考える。(18)
不公平税制と無駄遣い歳費の是正(3)


 「財源試算研究会」は2007年度までは「税金の使い道をただす財源試算」も行っていた。文末にその詳しい表を転載しておく。

 この試算では、不要不急の経費を削減し、それを他の必要な予算に回すことを求めるものである。試算の基本的な方針を富山さんは次のように述べている。

 歳出の見直しは具体的内容が必ずしも把握できないものもあり、推計値での試算は否めませんが、その支出意図から判断し、不要不急なものを拾い出す方法で試みています。

 2007年度の試算では、次のように算出された。

①無駄な公共事業の削減・・・3兆4449億円

②特別会計改革による削減額・・・33兆400億円
 特別会計については従来からその不明瞭さが指摘されている。会計検査院の調査によると特別会計は31会計(63勘定)もあり、その歳出総計は460兆円という膨大な額になる。特別会計の見直しは喫緊の課題とされるのは当然である。
 上記の削減額は、会計検査院の会計監査の結果指摘されている決算余剰金のうち未定分2.4兆円、予算に計上されていながら実際に使われていない「不用額」10.5兆円、18特別会計に設置されている積立金の適正基準について判断不能な額20.14兆円の合計額である。

③防衛予算の大幅削減・・・1兆4441億円
 思いやり予算の全額カット・・・2326億円

④ODA予算の削減・・・1899億円
 2007年度のODA拠出総額は約7,800億円である。日本のODAには次のような問題点があり、削減すべきODAもある。ではどんな問題点があるのか。富山さんの詳しい説明がないので、『ウィキペディア(Wikipedia)』から転載する。

「日本のODAの問題点」
日本のODAの問題点として、以下の点がしばしば指摘される。

タイド援助
 タイド援助とは、援助国がインフラ整備などの開発プロジェクトなどのODA事業に関して、資材の調達先や服務などの工事事業を日本企業に限定することである。「ひも付き援助」とも言う。事業を請け負う企業(商社・ゼネコン等)と政治家の癒着が問題視されてきた。

1970年代頃、援助される国にはインフラなどが整備されるだけで、援助国(請負企業)の一方的な利益追求によって事業が推進される恐れがあると懸念されていた。
 1980年代以降、これらの批判を受け、資材の調達先や工事事業の受注先などを特定しないアンタイド援助が増加していった。現在では、90%後半がアンタイド援助である。日本企業の受注率も、1993年には29%と減少続けている。

 いずれも正常なコスト意識がないので、取引そのものが非常に利益率が高く設定され、仲介する個人・業者がいくらでもコミッションを取れる構造で政商、黒幕と呼ばれる人物や政治家が私服を肥やしてきており、それを税金で大盤振る舞いしているのが現状である。

 日本のゼネコンや地元の政治家が私腹を肥やす目的でODAによって不必要な施設が作られ、それによって住民が援助ではなく被害を受ける事例が現在でも多々あるとされ、2002年にはインドネシアのコトパンジャンダムの建設によって住処を奪われた住民らが、その正当性を巡って受注したゼネコンと日本政府・JBIC・JICAを東京地裁に提訴するに至り、大きなニュースとなった。

⑤機密費の全廃・・・51億円

⑥政党交付金の廃止317億円

 以上、合計で38兆3883億円が削減可能と試算されている。これの実に厖大な金額である。これだけの削減が可能ならば、当然消費税など全く不要である。

無駄な歳出
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「財源=税」問題を考える。(17)
不公平税制と無駄遣い歳費の是正(2)


 前自公政権と財界は、社会保障を充実するためには財源不足であり、その解決には消費税増税しかないと、声だかに喧伝してきた。これに対して富山さんは「消費税を全廃しても税をただせば20兆円創出」できると主張している。そして「その財源探しの1つの例」を提出している。

 富山さんが主宰する「財源試算研究会」は、毎年「不公平税制是正による増収試算」をおこない、発表している。その試算は、最も公平な税負担配分は「応能負担(能力に応じた税負担)」であるとの認識から、その理念を原則として行われている。具体的には、総合課税・累進税率、勤労所得軽課・不労所得重課、最低生活費非課税などを基本とすることを原則とし、その視点で税制を見直し、不公平税制に焦点を当てて試算している。

 また、企業課税の不公平税制基準としては次の4項目に焦点を当てている。
①利潤の費用化
 費用でないものを費用として経理しているもの
②利潤の資本化
 利益なのに利益でないとして除外しているもの
③税負担の公平を著しく損なわせているもの
④税の執行上著しく公平を損なわせているもの

 以上の基本方針による試算の結果、2009年度の場合、新たな創出財源は19兆8838億円となっている。まずその概略説明を紹介し、最後に詳細な内容をまとめた表を転載しよう。その表からは試算の結果だけでなく、マスコミの報道だけでは知ることのできない大企業・高所得者優遇税制の煩瑣な仕組みの全体像が読み取れる。

 不公平税制の是正によって新たに生じる財源は、概略次のようである。

国税関係
合計14兆7627億円

(内訳)
「不公平税制是正による増収」・・・8兆4806億円
「大企業からの税率改正による増収」・・・4兆9720億円
「高額所得者からの増収」・・・1兆3101億円
地方税関係
合計で5兆1211億円

(内訳)
「不公平税制の是正による増収」・・・4兆2610億円
「税率配分の適正化(法人住民税)による増収」・・・8601億円

 国税・地方税を合わせると、なんと19兆8838億円という膨大な額になる。

不公平税制是正による増収試算表
(画像をクリックすると大きくなります。)

国税について 地方税について

 なお富山さんは、「資料不足で試算はできませんでしたが、不公平税制の是正という観点から次のような項目について検討しています。」と述べ、次のような項目を挙げている。

①法人税に累進税率を採用する
②金融課税の見直し
③資産性所得の総合課税
④企業再編税制の見直し
⑤減価償却資産の耐用年数の適正化
⑥繰り越し欠損金の取扱い
⑦相続税の配偶者に対する税額控除の見直し(上限設定など)
⑧固定資産税非課税等特別措置の見直し
⑨財産税(富裕税)の検討
⑩有価証券取引税の復活
「財源=税」問題を考える。(16)
不公平税制と無駄遣い歳費の是正(1)


 今回の総選挙で各党が出したマニフェストについて、私が知っていた内容は新聞報道程度であった。税制改革についてのみ、改めてマニフェストを読んでみた。前回紹介した経団連の「消費税を含む税制抜本改革」という新政権への提言が、何のことはない、自民党・公明党のマニフェストの文言と全く同じなのだった。当然に自公両党は、自分たちが押し進めてきた「不公平税制」には口をつぐんでいる。

 大企業・高所得者・資産家に対する減税の是正をはっきりと取り上げているのは共産党・社会民主党・国民新党だけで、民主党もそれにはまったく触れていない。その三党の税制是正部分の主張をマニフェストから抜粋してみる。

共産党
消費税増税に反対し、軍事費・大型公共事業などの無駄をなくし、大企業・大資産家に応分の負担を求めて、社会保障などの財源を確保します
 (1)消費税増税に反対します
 (2)軍事費・大型公共事業などの歳出の無駄をなくします
 (3)大企業・大資産家に「能力に応じた税負担」を求めます
 ※税金のムダ遣いを改めるなど歳出の改革で5兆円。大企業・大資産家への行き過ぎた減税の見直しなど歳入の改革で7兆円。あわせて12兆円の財源を確保する。

社民党
税財政
 大企業・金持ち優遇の不公平をただす
★国民に負担を強いる消費税率の引き上げはしません。飲食料品分は実質非課税とします。
★低所得者、子育て世帯に対する給付付き税額控除制度(所得税の減額と給付金の支給を組み合わせて生活を支援する仕組み)を検討します。
●高額所得者の最高税率を50%にもどし、基礎控除は現行38万円から76万円にします。公的年金の老年者控除等を復活します。
●法人税の基本税率を34.5%にもどし、大企業の租税特別措置は大胆に縮小します。
●ガソリン税の暫定税率は廃止し、環境面から抜本的に見直します。

国民新党
●所得格差の著しい拡大の現状に鑑み、大企業、高額所得者の税率を引き上げます。
●消費税は上げず、全額、社会保障のための目的税とします。
 (年金を除きます。年金改革のための財源は、年金積立金の取り崩しによることとします)。
 なお、食料品等の日常生活品目については、欧米並みのゼロ税率適用とします。
●このほか定率減税の復活、仕送り減税、住宅ローン減税、中小企業の投資減税、研究開発減税をあわせて5カ年で50兆円を実施します。

 大企業・高所得者・資産家優遇の不公平税制を是正することをはっきりと表明している上に、さらに社民党と国民新党は、「飲食料品分は実質非課税とします」・「食料品等の日常生活品目については、欧米並みのゼロ税率適用とします」と中・低所得者に重い負担を負わせている消費税の不合理点の是正を表明している。この三党は弱小党ではあるが、それぞれの持論をおおいに主張して、民主党の蒙を啓いてほしいものだ。

 ところで共産党は「大企業・大資産家への行き過ぎた減税の見直しなど歳入の改革で7兆円」の財源確保ができるとしているが、富山さんによれば、不公平税制の是正による財源確保は20兆円だという。前にも指摘したが、これは自公・財界がもくろんでいる10%消費税の税収に匹敵する額だ。次回は、その富山さんの試算を詳しく見てみよう。(『消費税によらない豊かな国ニッポンへの道』第10章です。)
「財源=税」問題を考える。(15)
消費税導入後の税制改悪(9)


 今回は話題を二つ取り上げよう。一つは「新政権に戸惑う財界の思惑」、他の一つは「もう一つの庶民負担増―低金利政策」です。

新政権に戸惑う財界の思惑

 ポチ・小泉は「私の任期中は消費税を上げ ません」とのたまっていた。この発言の裏には次のような思惑が隠されていた。

 ポチ・小泉は経済財政諮問会議(2006年6月22日)で次のような発言をしている。
「歳出をどんどん切り詰めていけば、やめてほしいという声が出てくる。増税してもいいから必要な施策をやってくれという状況になるまで、歳出を徹底的にカットしないとい けない」

 財界の財界による財界のための「経済財政諮問会議」はこのような魂胆をもとに諸政策を提言してきた。「広く痛みを分かち合う」との言い分で、必要な予算までカットし、中低所得階級(庶民)にだけ税・社会保障負担を負わせてきた。その施策は、まさに「社会保障充実のための財源に消費税を」という声を大きく揚げさせるための仕掛けの役割を果たしている。

 新政権(民社国連立政権)は新しい司令塔として「国家戦略室」の設置を決めた。それに伴って「経済財政諮問会議」は廃止となった。財界は「国家戦略室」にも財界人を送り込みたくて大いに気をもんでいるようだが、参加できたとしても「経済財政諮問会議」の時のような好き放題はできまい。まずはめでたいと言っておこう。

 さて、財界は新政権に戸惑いつつも、じわりじわりと新政権にすり寄り始めている。9月15日、経団連は「新内閣に望む」を発表した。今テーマにしていることと関連した事項をを抜き出してみる。

「特に、国民の将来不安を払拭し消費を拡大するためにも、税・財政・社会保障制度の一体改革が急務であり、年金をはじめとする諸制度に関する超党派の取り組みが俟たれている。」
とし、次の「課題に積極果敢に取り組むことを強く望む」と言っている。
「安心で持続可能な社会保障制度の確立、社会保障番号の早期導入、抜本的な少子化対策の推進、消費税を含む税制抜本改革・財政健全化」

 大企業・高額所得者・資産家の大減税については正面切ってはふれようとせず、こっそりと隠している。その一方で暗に「消費税」増税をちらつかせている。実に姑息だ。だいたい「税・財政・社会保障制度」を改悪し、「国民の将来不安」を増大させ、消費を冷え込ませたのは誰なのだ。ここ10年間、庶民には「広く痛みを分かち合」わせる一方、「大企業・高額所得者・資産家は何の「痛み」もなく、あまり必要でないものまで財政出動で手当されてきたのは誰なのか。自公政権と同様、自らがしでかしてきた悪政を反省することなく、偉そうにご託を並べている。

 本来、大企業の儲けは、その多くの部分を賃金や下請け単価の引き上げなどに資することが重要である。これによって、消費支出が上がり、景気を高揚する。資本主義社会を維持・発展させるための鉄則である。むしろ資本主義経済下の資本家・経営者の堅持すべきモラルと言うべきだろう。

 大企業などに対する減税による厖大な利益もそのように使われるべきである。しかし実際は、大企業はその儲けを取締役などの役員報酬や株主への配当、その残りは内部留保となし、景気の底あげを阻害している。景気高揚に対しては無策であり、景気も財政も悪化させている。大企業の資本家・経営者たちは自らの首を自ら絞めていることに早く気づくべきだ。

もう一つの庶民負担源―低金利政策
(『消費税によらない豊かな国ニッポンへの道』の第2章からでです。)

 富山さんはまず、岩波一寛中央大学名誉教授の論文「日本の財政危機とは何か」(『経済』2006年5月号)を紹介している。

 岩波さんは「(財政破綻が顕在化しないのは)財政破綻の露呈を政策的に抑えて先送りする大掛かりな財政・金融措置が稼働されているからである。しかも、それは、結局国民の極めて大きな負担で辻褄が合わされているのである」と指摘し、問題点を四つあげている。

① 日銀の低金利政策
② 日銀の超量的資金緩和政策
③ 公的資金による隔離市場
 財政破綻先送り要因は、市中金融市場とは別に大量の公債を引き受けかつ保有し続ける「公的資金による隔離市場」がなお保持されている。
④ 間違った外為管理
 大規模な日銀の信用創造に助けられた外為管理によって、輸出主導の日本経済と円の対外価値を支え、それが財政破綻の顕在化を防いでいる。

 このうちの①について、富山さんは以下のように論じている。

 日銀の低金利政策(ゼロ金利)による国民の逸失利得(利益)は莫大な額である。日銀の白川理事(当時=現総裁)は、ゼロ金利の期間に預金者が失った利益(逸失利益)について、国会で次のように証言している。

「1991年の利子収入が続いていたと想定し、推計すると、2004年までに国民が失った利子は304兆円になる。」

 福井総裁(当時)もこれを認めているという。(『経済』2006年5月号・金融評論家桜田氾氏「日銀の量的緩和策解除」)

 これに対して、小泉首相(当時)は
「ゼロ金利は悪いことばかりではない。住宅ローンが低く抑えられているという利点もある」
と国会で答弁している。

富山さんはこの小泉の発言を
「まさに一般国民とはかなりかけ離れているリッチな者の思い込みとしか言いようがありません」
と批判しているが、むしろこれは小泉が好んで使う詭弁の一つである。ここで使われているのは「部分より全体に及ぼす」詭弁である。その詭弁の正体を三菱総合研究所が数字ではっきりと示している。同研究所は「国民経済計算に基づき計算した結果」を次のように報告している。

「1991年に家計が得た利子所得は35兆円で、以後利子所得は減り続け、1991年当時の金利水準に戻した場合と比較すると、住宅ローンの支払い利子を差し引いて、2005年までの家計部門の損失の累計額は283兆円になり、一方企業の方は利子負担を260兆円減らし、金融機関は95兆円利子所得を増やしている。」

「家計から企業、金融機関への所得移転により経済危機は教われたのである」と桜田氾氏(前出)は述べています。

 多くの国民は預貯金などの利息をもらわないという形で「税金」を取られ、その税金が国家の手で銀行や大企業に「補助金」として配分されたものといえます。なぜならその施策を選び実行したのは政府だからです。

「財源=税」問題を考える。(14)
消費税導入後の税制改悪(8)


 これまでに知ったことは、「金持ちから貧しい者への税・社会保障負担の付け替え」がおこなわれ、それが「収入の二極化と、収入に反比例した形の負担の二極化」を引き起こし、「日本における格差と貧困を増幅させてきた」とまとめることができよう。

 さて、第6章の終わりで富山さんは、1987年から2005年の年度ごとの「再分配所得の不平等度(ジニ係数)、租税・社会保障による再配分係数、租税負担率、社会保障負担率」をまとめた詳しい資料を用いて、「消費税導入後の税制改悪」を総覧する解説をしている。ここではこれまでの議論の総まとめの意味で、その結論だけ記しておく。

○所得の再分配について
 本来の意味での再分配(高額所得者から低所得者への配分)がなされていない。したがって、社会保障も本来の再分配とはかけはなれたものになっている。

○税・社会保障負担について
 政府は、日本の税負担は国際的にみて低いという口実をつくり、税・社会保障負担を合わせた「国民負担率」を50%以上に引き上げることを目標とした増税と社会保険料の引き上げを画策し、2000年以降、社会保険料では介護保険料を含む負担増と所得税の控除を中心に増税を続けてきた。
 個人課税、法人課税それぞれに最高税率・基本税率が引き下げられ、租税特別措置の温存・拡大があり、租税負担率は大幅に下がって当然なのに、それほど下がっていない。それは消費税の導入・税率引き上げ、所得税の諸控除の廃止・縮小の増税によって下支えされているためである。
 政府の目論む高額利得者のための利益保護政策を貧しい人たちが支えている構図がここにはっきりと現れている。

○社会保障負担について
 年々負担額、負担率とも増加傾向にあり、租税負担率が下がり、その分社会保障負担率が上昇するという、税金から社会保障負担への付け替え現象が起きている。
 保険料は高収入者であっても一定の収入額で頭打ちになってる。高額所得者の負担を減らし、中低所得階層の負担増で社会保障収支の帳尻を合わせていることを物語っている。

○税負担について
 高収益企業・高額所得者・大資産家への負担軽減のツケを、消費税と社会保障負担増という形で中低所得階層へツケ回しをしていることが明らかにみてとれる。

 2008年1月23日に財務省は、「国民負担率」が過去最高を更新する見通しになったと発表しました。再分配の原資を検証するためには「所得の再分配」と「国民負担率」を合わせてみることで、税・社会保障負担の実態と再分配の不平等度がいっそう鮮明に表されます。

 税・社会保障負担の応能負担を徹底することと所得の再分配を徹底することによってナショナルミニマム(最低保障)が達成できることを承知していながら政府はサボタージュしており、それをどのようにして本来の国民本位の制度に変えることができるのかは、国民も積極的に考えなければならない大きな課題です。

 次に富山さんは「貧困率悪化は非正規雇用の増加による格差拡大が主因」であることを、経済開発機構(OECD)による分析を通して論じている。

2007年9月20日、日本経済を分析した対日経済審査報告書

 「相対的貧困率」はOECD加盟国中最下位のアメリカの13.7%に迫る13.5%で日本はワースト第2位になり、ワースト第3位のアイルランドの11.9%より際立って高い数値であることが明らかになった。

 対日審査に出席した日本政府の代表は「格差の主因は高齢化による人口構成の変化」だとする日本政府の公式見解で反論したが、OECDは、高齢化は「格差の一因」ではあるが「主な要因は労働市場における二極化にある」と、これを退けた。

 さらに報告書は、格差の原因である正規と非正規の労働市場の二極化を是正することが重要な鍵だと指摘し、正規雇用者への「包括的な取り組み」を求めている。また、雇用水準に比べ相対的貧困率の高さは驚くべきことだと指摘している。

 また「税制改革については、所得分配への影響を考慮すべきだ」と勧告している。

2008年10月21日にOECDが発表した報告書『格差は拡大しているか』の分析

 加盟国平均で消費に税金をかけることによって格差を示す係数が、消費税がかけられていないときの0.299から0.321に大きく拡大している。この拡大幅は同平均で1980年から2000年にかけて拡大した数値に匹敵する大きさである。日本は0.309から0.316に拡大している。

 さらに同報告は際立った2つの特徴を示している。すなわち「第1に、消費税の重い負担が低所得者層に集中すること、第2に、全般的な消費税は、個別的な物品課税よりも低所得者の負担となっている。」

2009年9月16日、『2009年の雇用見通し』を発表

 つい二日前の報告である。そこでOECDは「日本では貧困層に占めるワーキングプア(働く貧困層)の割合が80%を超え、OECD加盟国の平均63%を大きく上回っている」と『日本の働く貧困層問題は深刻』という指摘をしている。

 さらに、「日本では就労者が少なくとも1人いる家庭の約11%が貧困に陥っており、トルコやメキシコ、ポーランド、米国に次いで5番目に高かった。」と報告している。ちなみに加盟国の平均は7%である。

 また、日本では昨年来の経済危機の影響で、パートなどの非正規労働者の数がことし7月までの12カ月間に3.6%減少した(いいかえれば解雇された)。正社員数の落ち込みは1.1%にとどまっており、非正規労働者の苦境が浮き彫りになったし、さらに「日本の非正規労働者の多くは失業保険などが適用されず、失職すると著しい経済的困窮に陥る」と指摘している。
「財源=税」問題を考える。(13)
消費税導入後の税制改悪(7)


増税のターゲット・年金生活者

 年金生活者も、収入が減少した上さらに負担が重くなり、「広く薄く」「誰もが痛みを分かち合」わされた人たちだ。(私もその一人なので、身を以て痛みを感じている。)

 「高齢者は金持ちだ」などという物言いがあるが、そのような人はほんの一握りで、ほとんどの高齢者は収入への不安を抱えている。年金収入の額をみると
厚生年金の場合、現行水準は月額23万8000円ほどだが、年々減少傾向にある。
国民年金の場合、受給者は900万人を超えるが、月額平均は4万6000円(2005年12月)程度である。
 また無年金者は100万人を超えるという。

 高齢者の収入状況をみますと、共働き世帯は別として、年金収入だけでは生活が成り立たない人が多く存在し、その不足を給与所得で補っている人もいますが、現実には働く場所を探してもほとんどありません。

 日本の年金制度は、生活保障のための年金制度ではなく、生活水準の保持を目的とするもので、積み立てた額により受給額が異なる仕組みになっています。したがって、受給額で生活できることを前提とする「福祉」とはいえないものであり、現に議論されている「基礎年金」にしても、その額自体、最低生活水準には程遠い額です。それにもかかわらず、政府はその2分の1負担さえ、低所得者を含めた国民負担・消費税に特化した財源調達手段をとろうとしているのです。これは福祉というより民間の保険会社と同じ発想であり、「金を払わなければ支給しない」営利事業会社のような仕組みを政府は強めているのです。

 高齢者の税制を見ると、ここでも収入が減少しているにもかかわらずそれに反比例して税金や社会保障負担の増加していることが分かる。消費税導入時に消費税導入による増税への負担緩和策として創設されたり増額された老年者控除や配偶者特別控除や公的年金等控除などが、税制調査会の手により廃止・縮小された。約束を反故にする闇討ちのような増税である。この増税の実態を詳しく見てみよう。

 当初、公的年金は「給与の後払い」として給与扱いとしていた。したがって、経費的控除として給与所得控除を適用していた。それをなんの理由説明もせずに給与所得からはずし、どこにも区分されない「雑所得」に区分した。それに伴って、経費的控除は「公的年金等控除」と姿を変え、さらに、「年金の積立段階で掛け金を社会保険料控除として税金計算から控除したのだから、公的年金等控除するのは二重控除だ」という理屈をつけ、公的年金等控除を縮小し、結果的に今の制度に改悪している。

 65歳以上の年金生活者の場合
①公的年金控除の縮小
②老年者控除の廃止
③配偶者特別控除の廃止
の結果、それまでは所得税がかからなかった課税最低限387万7000円以下にいた人たちにも課税所得が140万円ほど生じ、所得税・住民税を合わせると少なくとも21万円を新たに払わされる結果になっている。この額は、消費税率に換算すると、収入比で5.4%の増税に匹敵する。厚生年金の当時の水準は月額23万8000円であり、夫婦2人の家族では9万円弱の課税増となり、消費税換算では約3%の税率アップに等しい負担増になっている。

 この発想は、社会保障といいながら社会保障を生命保険や損害保険と同等のレベルのものとして扱うのと同じ発想です。しかも、営利事業の保険会社の保険は優遇していながら公的年金についてはその控除額を減少させ、税・社会保障負担をより重くしてきているのです。このようなことによる被害は、所得の少ない人ほど大きいというのが特徴です。

 政府税制調査会は、「2008年度税制改正」答申で「女性の社会進出を促進するため、配偶者控除の廃止を含め見直す」としており、また、民主党の「税制改革大綱」(2007年12月25日)では「配偶者控除、扶養控除の廃止」を表明しています。

 これらの考えは憲法第25条の最低生活保障のための課税最低限を全面的に否定し、「世帯単位から個人単位」という発想で、現実の家族構成を全く無視した増税まっしぐらの道を進もうとする何物でもありません。世帯単位から個人単位の考え方を単純に税制に応用するのは間違いです。

 金融庁は、資産家、金持ち老人を対象とする減税策を財務省に要望すると報じられました(2008年8月23日日本経済新聞)。高齢者の株式投資を対象に500万円以下の譲渡益と100万円以下の配当金にかかる税金をゼロにしようというのです。麻生首相も自民党幹事長時代に株式投資から得る300万円までの配当を非課税にする案を提唱していました。

 減税する金があるのなら、生活できないでいる人に先に回すべきです。その人たちはその金を必ず使ってくれます。株で儲けるような人は儲けた金をすぐ使いません。経済をよくするには必ず使ってくれる人により多く配分することがもっとも良策なのです。

 さらに、毎年の保険料の引き上げで保険料を払えない人が増え、そうした人たちは1000万人を超えているといわれている。

 高齢者問題は、まずなによりも最低保障としての収入の確保が挙げられるが、そのほかに医療・介護体制や住宅の問題がある。小泉・竹中の構造改革は周知のように医療・介護体制をも破壊してきた。

 ヨーロッパなど福祉国家は、老後の生活を保障する全額国庫負担の最低保障年金などさまざまな制度をもっていますが、住宅・医療・介護などでも手厚い支援策がとられています。それらをモデルに日本も社会保障制度の根本的な改革、それも現今議論されているような制度ではなく、国民本位の制度改革プランを作り、国民に提示し、国民の納得を得ること、負担のあり方についても、その実現の国家的保障(国の責務として明確にする)の上に立った提起をすることが喫緊の課題でもあります。

 昨日、民主党・民主社会党・国民新党による新しい連立政権が発足した。この政権が, これまで見てきたような観点から、自公自滅政権が歪めてきた税制や雇用制度を抜本的に改正することができ、さらに公法においても民意を大幅に汲みとるようになれば(こちらはほとんど期待できないと、私は思っているが・・・)、この度の政権交代を「無血革命」と呼んでもいいだろう。

(「公法」については
「『国家意志』とは何か(1)」
を参照してください。)
「財源=税」問題を考える。(12)
消費税導入後の税制改悪(6)


増税のターゲット・サラリーマン


収入の二極化に反比例した負担の二極化


 ポチ小泉が「構造改革」という悪政を強行するときにほざいたことを忘れまい。
「広く薄く」「誰もが痛みを分かち合おう」
「今の痛みに耐えて明日をよくしようという『米百俵の精神』こそ、改革を進めようとする今日の我々に必要なことである」


 また自公自滅政府は減税の根拠として、「高い税金は勤労意欲を阻害する」という理由をあげていた。それを根拠として行われたのが高収益企業・高額所得者・資産家への大減税であった。その一方では少ない収入でも高い負担をさせられ、滞納すると生活費まで差し押さえられ、強制徴収されている人たちがいる。「痛み」は一般庶民だけが背負わされることになった。つまり、労働分配率の低下(収入の不平等な配分)により貧富の格差・二極化が進むのと反比例した形で、税・社会保障負担などの負担配分の二極化も進行しているだ。「二極化」の実態を具体的に見てみよう。

(1)
 サラリーマンの平均給与は10年近くも連続してダウンしてきた。国税庁の発表によると、2007年分で年収200万円以下の給与所得者は1220万人と2001年に発足した小泉内閣以降234万人も増えていて、当然労働分配率も下がっている。

(2)
 フルタイムで働いても、生活保護給付水準に届かない世帯が650万世帯もある。

(3)
 1998年から2006年1~3月比で正規雇用は454万人減少し、非正規雇用が490万人増えている。1985年に「労働者派遣法」が制定されて以降大企業は、不況とグローバル化を口実に、採用抑制、成果主義の導入、非正規雇用への置換えを進めてきている。政府も相次ぐ労働者派遣法の規制緩和や労働基準法の改悪、リストラ支援法等で労働者を犠牲にし、大企業が利益をあげやすくするために諸法規を変え、規制緩和を支援してきました。

 2008年版『労働経済白書』は、非正規雇用の増加について、賃金の「節約」が主要な目的であり、企業側には労働者のために柔軟な就業機会をつくるという認識は低い、としており、これまで政府が主張してきた非正規雇用化は「労働者のニーズ(要望)」によるものというのは誤りだと認めている。

(4)
 勤労者の収入は、どんどん減らされているが、その一方では企業は莫大な儲けを上げている。その儲けの分け前については既に見てきたことだが、もう一度確認しておこう。役員報酬は小泉内閣5年間で2.7倍、株主への配当は2.5倍と大幅に増やしている。その残りは内部留保である。

 高収入を上げている多くの人は大企業の経営に携わっている役員です。ある意味では事業者です。その役割で受ける報酬は「給与所得」というより「事業所得」なのです。だとすれば、事業所得として収支計算をおこない、確定申告をすべきものです。事業所得であれば、仕事にかかる経費はほとんど会社もちであり、前出のような莫大な給与所得控除を控除できなくなります。

 この所得区分については政府税制調査会でも議論をしていますが、それら役員に視点を当てたものではなく、一般サラリーマンの給与所得控除をいかに引き下げられるかの方向で検討されているのです。給与所得控除が高すぎるから現行平均30%のものを10%にまで引き下げようとする意図での議論が政府税制調査会では進められているのです。

 金持ちばかり集めているこれらの審議会委員の議論の中身は、「国民本位」とは程遠いものです。


税金とりたての仕組み


 サラリーマンにかかる税・社会保障負担の種類はたくさんある。主だったものを列挙すると、
①所得課税
 所得税(源泉所得税)、住民税
②財産課税
 固定資産税、都市計画税
③消費課税
 消費税、酒税、タバコ税、揮発油税
④その他
 自動車税・印紙税・国民健康保険税など

 これらの税金は「人税」(人にかかる税金)・「物税」(物にかかる税金)と分類することができる。「人税」のなかで最も重要なのは生活費に食い込む所得課税である。富山さんは、所得課税は『「食う前に税金を払え」という仕組みになっている』と言う。

 日本国憲法は「国民の生存権」を保障している。

第25条
 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 これを具体的に規定しているのが生活保護法であり、そこには最低保障とは何かが示されている。

第2条(無差別平等)  すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。

第3条(最低生活)  この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

第57条(公課禁止)
 被保護者は、保護金品を標準として租税その他の公課を課せられることがない。

 上記の視点からみますと、所得税・住民税における課税最低限(基礎・配偶者・扶養などの基礎的控除)は、生活保護給付水準より低く、憲法の生存権保障に反するものであり、明らかな憲法違反です。

 このことは非常に重要なことです。例えば、「国民年金を30年掛けていてももらう額は生活保護給付よりも低い」との意見が出てくると、「それでは生活保護給付水準を減らします」との厚労省の対応が示され、小泉内閣は社会保障制度を次々と減額してきました。

 生活保護給付水準での最低生活費は「最低賃金」や「課税最低限」の目安になっており、その中の1つでも下がると他の2つに波及していくことを指して「3点セット」と呼ばれています。給付される年金が最低生活費に満たなければ、生活保護給付でおぎなうことは前述の生活保護法に規程されています。国はそれらを保障する義務があり、国民はそれを求める権利を保障されているのです。  それはここまでは税金はかかりませんという収入の非課税ライン、つまり「最低生活費」には課税しないという「最低生活費非課税」の原則を日本国憲法は担保するとしているにもかかわらず、現実には政府は守っていないことになります。


課税最低限の額は先進国中で最低


 少し前まで、財務省は先進国中最高と宣伝し、その額の引き下げを唱えていた。(富山さんは「財務省の国際比較の手法はおかしなものです」と指摘している。)しかし、その後の最近の比較では、諸外国の制度改革による違いが出て逆に日本が最低になり、財務省の声もずいぶんと小さくなってきている。

 最低という現状を謙虚に受け止め、諸控除の引き上げをおこなうことが、財務省の権威と誇りの回復につながるのではないでしょうか。

 また、課税最低限にはもう1つの矛盾があります。それは、所得の種類が違うと課税最低限の額が違ってくるという問題です。「同一所得の同一課税」という「水平的公平」の理念からいえば、不合理な制度となっています。

 その際立った違いを示すものとして、富山さんは次のような例を挙げている。
 夫婦子2人・片稼ぎという家族構成の場合、事業所得者の控除は人的控除だけで、その額は152万円までである。これに対して、配当所得のみの者の場合は853万円まで課税されず、源泉徴収された税額は全額還付されている。この違いは、配当所得の場合、支払い先の企業で法人税を支払った残りの分配であり、すでに前段階で税金(法人税)を払っているので、個人の確定申告でまた所得税を払うのは二重課税であるからという理屈による。

 しかし、二重課税の理屈を通用するのであれば、消費税もまた「消費とは所得の処分形態」であり所得を得る段階で既に所得税を支払っているので、配当所得同様税額控除すべき税金となります。前に説明したように「同一所得の同一課税」の考え方からすれば、国税という限りでは同一所得に課税する行為は同じであり、最も負担能力の高い配当所得が調整(減税)され、逆にもともと担税力のない消費税には適用されない(増税)というのは実に不合理です。

 「構造改革」路線によって破壊された経済的社会基盤や労働環境を是正する方策を労働運動総合研究所(労働総研)が提出している。2008年10月31日、「正規雇用の拡大と働くルールの確立で外需依存から脱し、内需拡大による景気回復ができる」との試算を発表した。その試算で基本的骨格として次の項目を挙げている。

 派遣とパートらの正規化

 サービス残業の根絶

 週休2日制と有給休暇の完全取得

 これらの項目の実施で635万人分の正規雇用を生み出すと、試算している。その試算をもう少し詳しく見てみよう。

 正規化は、正規雇用がないため派遣となった人や正社員と同じ労働時間のパート363万人が対象とされ、これによって、年収はパートなどで約240万円増の486万円、派遣で約110万円増の351万円(25歳から29歳)など計21兆2922億円増え、消費需要(家計支出)も14兆8963億円増大。誘発される国内生産は24兆2580億円増加し、国内総生産(GDP)を2.52%押し上げると試算している。

 また、中小企業の多い分野の生産増につながるため中小企業へのテコ入れにもなり、税収も国税1.3兆円、地方税0.97兆円、合わせると2兆2700億円も増えると算定している。

 以上は社会保障費の拡大などの財源にもなる。そのための資金は大企業のため込み利益(内部留保)の5.28%程度にすぎず、実現可能だとしている。

 企業の内部保留は、もともと不況時の労働者保護対策費として積み立てられたものだ。今こそそれを利用すべき時なのに、大企業の経営者どもは役員報酬や株配当は2倍以上も大幅に増やしていながら、労働者の保護のために内部保留を使うことを拒否している。役員報酬や株配当を補填するための内部保留と心得違いしているようだ。
「財源=税」問題を考える。(11)
消費税導入後の税制改悪(5)


 大企業・高所得者・資産家の大減税の総額は約20兆円にのぼるという(詳しくは後ほど取り上げる)。税率5%の場合の消費税の総額は約10兆円だから、大企業・高所得者・資産家の大減税分は消費税全額を使っても埋まらない。自公自滅政府は、医療・社会保障・教育などの福祉の充実を名目にして、消費税率を10%に挙げる政策を打ち出していたが、高齢化社会対策を名目に導入された消費税がその名目通りには使われなかったように、今度も名目通りに使われるのかどうか、疑った方がよい。税率10%だと消費税によって大企業・高所得者・資産家の大減税分を埋めることができる。とっても見え透いていないか。

 現行の消費税では大企業・高所得者・資産家の大減税分は埋まらない。その不足分はどこからひねり出しているのだろうか。中小企業・労働者(サラリーマン)・年金生活者がそのターゲットだ。

税制改悪が中小事業者を追い詰めている

 いま、政府の政策で最も取り残されているのは中小企業対策です。それは、中小企業対策費も年々減少しており、一方では支払う根拠のない米軍への「思いやり予算」は中小企業対策費を上回る規模になっているというのが現実です。

 2008年12月15日に日銀が発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の業況判断指数(DI)が第1次石油危機と並ぶ約34年ぶりの大幅低下となったと報じています。この調査は、大きく分けて企業心理と経営内容の2つに分かれ、「判断項目」と「係数項目」で表わされますが、政府のGDP(国内総生産)と並び広く活用されています。

 大企業のDIは4期連続マイナスで、中小企業も連続してマイナスの状態になっています。大企業はその対策として守りの姿勢に入っていることから、中小企業・中小事業者は、これまで以上の生産調整や外注(下請け)単価の切り下げの圧力が強くなることが予想され、厳しい情勢を迎えています。

 政府は、大企業以上に影響が大きい中小事業者や勤労者に対する有効な対策を講じておりません。政府の「総合経済対策」にしても、5人のエコノミストの採点は、2人が70点で中小企業向け新保証制度などを評価していますが、残りの3人は35点、30点、10点と落第点を示しており、木内登英氏(野村証券金融経済研究所チーフエコノミスト)は
「中小企業の資金繰り支援など"後ろ向き"の対策が多い。中小企業を強くする政策を増やすべきだ」
と辛口の評価をしています(2008年8月30日 日本経済新開)。

 中小事業者は「仕事がない」「収入が激減している」状態にあり、先にそのことの対策がない限り金を借りても当面返済の見込みが立たない状況にあります。安定した仕事が確保されることを最優先課題とすることが最も求められている問題です。

 そのような状況の中で、税・社会保障負担が、中小事業者にとっては大変な負担になっている。その実態を見てみよう。

1 消費税負担の問題

 消費税は本来商品価格に上乗せ(転嫁)することを予定しているもので、中小企業は大企業にくらべ価格決定の競争条件が弱く、なかなか上乗せできない。そのため、いわゆる「益税」(受け取った消費税を納税しない)どころか、「損税」(受け取れないため自腹を切る)になることが多いのが実態である。

 また、繁雑な消費税事務の負担を緩和するために一定額の免税や簡易な計算を認める簡易課税制度が設けられたが、繁雑さは一向に解消されていないにもかかわらず政府は一方的にその制度を改廃した。そのため新たに課税される零細事業者が増え、滞納が増加した。ところがその滞納に対する国税当局の徴収方法が年々権力的になり、事業の経営と生活を圧迫してきている。

2 課税所得算出の改悪(実質的な増税)

 事業者の場合、所得税の課税所得算出にはまず、収入-経費=所得(利益)という計算を行う。その計算における経費の項目に、配偶者やその他の家族が事業に従事した場合、記帳が不十分な納税者(白色申告者)に対し支払った給料を経費として認めないという規定(所得税法56条)で差別的扱いをしている。現実に働いていることを確認できても家族従事員の場合は認めないとしている。その代替措置としては事業専従者控除の名で配偶者の場合80万円、その他家族の場合は50万円の額を事業主の所得から控除されるだけである。(隣の人が働きに来る場合はその給与は全額認められる。)

 この法律は例外規定として青色申告者(正確に記帳している人で申請した人)には、配偶者やその他の家族でも専従者給与として経費を認めている。

 これは明らかに青色申告をしていないということへのペナルティであり、実際に労働しているにもかかわらずそれを確認しながら労働の対価を認めないというのは社会通念からいってもおかしな理屈です。

 それは「所得とは何か」の規定が不十分であることに由来するものであり、憲法違反でもあります。外国にはこのような理不尽な規定はありません。所得税法が欠陥税法であることを示す一例です。

 本来仕事に従事している勤労者に対する労働の対価としての賃金の支払いは、国の権限で額を決めるものではなく、雇用者の権限で決められるものです。税務当局のいう「所得分散」(累進税率を逃れるために所得を幾人にも分け、低い税率にする方法)であるとしたなら、その事実を指摘し納得させることはできても、現実に支払っているものを否定することは税法の枠を超えたものであり、課税権の逸脱といえます。国税当局のとっている行為は権力による一方的な低賃金の固定化であり、ワーキングプアーを国として作っている行為です。

 所得税法第56条についてはかなりの地方議会が反対決議をしており、社会的にも非難されて当然なものです。1日も早く解決すべき不公平税制です。このことは、それでなくともむずかしくなっている中小事業者の後継者育成を「給料がもらえない」という形で阻害していることにもなっています。

「財源=税」問題を考える。(10)
消費税導入後の税制改悪(4)


資産家の大減税

 資産と言うほどのものは何ももたない私には資産家に対する課税など全く無縁だし、関心も持ってこなかった。改めて資産家に対する課税について学習することとなった。

 資産家に対する課税として、資産性所得への課税、有価証券取引税、相続税の三点を見てみよう。

(1)資産性所得税の大減税

 資産性所得とは利子、配当、不動産、一時所得、雑所得のほか、不動産や株式の譲渡所得などである。

 これら資産性所得にも所得税・住民税が課税されるが、その大半は総合累進課税からはずされ、分離課税・比例(低率)税率という課税形態になっている。政府の方針では、これら資産性所得は、勤労性所得(事業所得や給与所得)と切り離して二元的所得税構想を目指して税制改正を着々と進めてきている。

 簡単ないいかたをすれば、額に汗して稼ぐ勤労所得については総合課税・累進税率という重い税金を課し、働かなくとも所得が得られる不労所得の資産性所得については分離して低い比例税率にし税金を軽くしようというのです。

「構造改革」路線の中で、竹中平蔵氏は「貯蓄から投資へ」と1500兆円に及ぶといわれる貯蓄に目を付け、株や投資にその資金を回そうと企てたのです。民主的な課税のあり方として「勤労軽課・不労重課」の原則というものがあります。額に汗して得た所得には軽く、働かずして稼いだ所得には重い税金をかけるという考え方によるものです。しかし、現行税体系は、それとは逆の仕組みになっています。

 収入の二極化のところでも説明しましたが、高収益企業の莫大な利益は、勤労者の賃金や下請け単価の引き上げには向かわず、役員報酬の大幅引き上げと株主への高配当という分配に主力を注いでいます。現在の世界同時不況下でも高配当は続けられています。

 ここで富山さんは『プレジデント』誌(2007年12月3日号)に掲載された配当金額表を参考に、次のような二つの観点から、どれだけ減税になっているのかを試算している。


 消費税導入後の高取益・高収入者を優遇するための税制改革は非常に極端であった。配当課税や株式譲渡に至っては、消費税導入直前の65%を10%にまで大幅引き下げ、大減税を行っている。これに着目して導入前との比較をする。

 現行法ベースで総合課税した場合の課税額と比べて、その減税額を算出する。

1位 任天堂相談役山内淳
受取配当額 97億7286万円
 1の場合の減税額 34億2085万円
 2の場合の減税額11億7286万円

 『プレジデント』誌の資料は自社株のみを対象にしている。このクラスの人たちは他社の株もかなり持っていると考えられる。それも加味すると、受取配当は100億を超すものと思われる、と富山さんは推定している。

2位 ユニクロ社長柳井正
受取配当額 63億1085万円
 1の場合の減税額 22億880万円
 2の場合の減税額 7億7286万円

 柳井正の場合、前回紹介した給与所得控除よる減税額を加えると25億円を超える大減税額になる。

3位 アイフル社長福田吉孝
受取配当額 40億4838万円
 1の場合の減税額 7億7286万円
 2の場合の減税額 4億8582万円

4位 SANKYO会長毒島邦雄
受取配当額 40億1400万円
 1の場合の減税額 8億8308万円
 2の場合の減税額 18億630万円
(配当軽減税率10%適用者)

5位 松井証券社長松井道夫
受取配当額 34億4563万円
 1の場合の減税額 4億1348万円
 2の場合の減税額 12億597万円


 富山さんは、上位5名のほかに、自公政府の政策づくりに深くかかわってきた財界代表者たちが受けた減税額を試算している。彼らも相当な恩恵に浴している。

トヨタ自動車名誉会長豊田章一郎
受取配当額 13億4064万円
 1の場合の減税額 2億9494万円
 2の場合の減税額 6億329万円
(配当軽減税率10%適用者)

ソフトバンク社長孫正義
受取配当額 8億3036万円
 1の場合の減税額 9965万円
 2の場合の減税額 2億9063万円

トヨタ自動車社長豊田章男
受取配当額 5億4720万円
 1の場合の減税額 1億2036万円
 2の場合の減税額 2億4622万円
(配当軽減税率10%適用者)

トヨタ自動車相談役奥田碩
受取配当額 768万円
 1の場合の減税額 93万円
 2の場合の減税額 269万円
(配当軽減税率10%適用者)

キヤノン会長御手洗富士夫
受取配当額 923万円
 1の場合の減税額 203万円
 2の場合の減税額 415万円
(配当軽減税率10%適用者)

オリックス会長宮内義彦
受取配当額 511万円
 1の場合の減税額 113万円
 2の場合の減税額 230万円
(配当軽減税率10%適用者)

(2)証券優遇税制

 小泉・竹中政府は「貯蓄から投資へ」のスローガンをかかげて、それを促進するため証券優遇税制を押し進めた。

 2003年にそれまでの20%の比例税率が半分の10%に軽減され、それに時を同じくして支払い配当額が2倍近くに急上昇した。個人株主の売買額による所得でみると、4年後には7.1倍にもなっている。

 2008年10月27日付「赤旗」紙によれば、2006年の株式譲渡による減税額は申告所得税だけで2322億円にのぼり、申告所得の合計額が100億円を超える10人の減税総額は約183億円に達している。

 国際的にみると日本の配当所得課税や譲渡益課税はアメリカ・イギリス・フランス・ドイツの諸国と比べ、2分の1か3分の1という低さだという。

(3)相続税の減税

 相続税は所得の再分配がもっとも求められる税制である。従来財産相続には、生活用財産や中小商工業者の事業用資産を除き、高い税率での負担が求められてきた。しかし、相続税の最高税率75%であったものが、1988年には70%となり、2002年には一気に50%に引き下げられた。この税率は、「各法定相続人の取得金額が20億円超」の場合に適用されるもので、相続人が配偶者子2人の計3人とすれば、相続財産は60億円超の人に適用されるという、ごく限定された人の場合であり、国税庁の統計によれば年間20人前後といわれている。

 最高税率を下げる一方で、2009年度税制改悪では、一般庶民の相続税課税強化の検討が進められていた。基礎控除の引き下げによる課税強化である。結果は先送りになったものの、次年度以降に基礎控除引き下げによる増税が検討されることは確実な情勢だといわれている。(政権交代がどう影響するのかしないのか、注目される。)

 ごく少数の大資産家が優遇され、ローンの支払いも済まない生活用財産程度の庶民にまで苛酷な税金を課そうという政府税制調査会の姿勢は問われなければなりません。資産家や金持ちへの大減税のツケを庶民の増税で賄おうとするやり方は、法人税の減税資金に消費税を当てようとする動きと同一のものです。

「財源=税」問題を考える。(9)
消費税導入後の税制改悪(3)


 消費税導入後、大企業が大儲けをしている一方、中小企業は青息吐息の状況で倒産する会社が増えている(中小企業の問題は後ほど取り上げる)。そして個人所得の面でも、高額所得者の大減税の一方、労働者(サラリーマン)・年金生活者に対しては増税が行われ、貧富の二極化が顕著になってきている。労働者(サラリーマン)・年金生活者に対する増税については後ほど見ることにして、今回は高額所得者の税金がどのようになっているのか、具体的に見てみよう。

高所得者の大減税

 2007年分の確定申告者のうち、所得金額が10億円超の395人の内訳は事業所得者が11人で、残りの384人は給与所得(報酬)が中心の人で占められている。前回、企業の儲けが大企業の役員報酬として多額に支払われていることを知ったが、そのことが確定申告にもはっきりと現れている。
所得100億円超が9人
50億円超100億円以下が27人
20億円超50億円以下が92人


 このような高額所得者の税はどうなっているのだろうか。  富山さんはまず、最高税率引き下げの不合理性(高所得者ほど減税額は多くなる)を示すため、消費税導入前と比較する試算を行っている。

 所得税の最高税率は消費税導入前の75%が、地方税への税源移譲前までは37%まで引き下げられている。最高税率引き下げは1986年頃からを始まったが、消費税導入直前の税率65%との比較で、その試算は行われている。

 それによると、2005年分確定申告で課税所得2000万円超の納税者は27万7073人(所得税申告者の0.03%)で、その人たちの減税額の合計は2兆133億円に達する。この減税額は、小泉政権時代における労働者・年金生活者の増税額1兆6860億円(定率減税の廃止分を除く)を大きく上回っている。

 この間の社会保障の負担増や給付減と比較しても、医療・年金を除く、介護保険・雇用保険・大学授業料の引き上げ・生活保護の老齢加算や母子加算廃止・年金給付減・失業手当減・障害者医療の縮減と自己負担増の額を上回る大減税を一握りの金持ちに与えているのです。

 さらに具体的にどの階級がどれだけ減税になっているのかを、課税所得別に見ると、(1人当たりの平均)
5000万円超 2337万円
3000万円超 499万円
2000万円超 243万円
という大減税になっている。

 では、これら大減税の恩恵を受けているのはどのような者たちなのか。5000万円超の所得階層では
豊田幸一郎(トヨタ自動車名誉会長)
奥田碩(トヨタ自動車相談役=前日本経団連会長)
御手洗富士夫(キヤノン会長=現日本経団連会長)
宮内義彦氏(オリックス会長)
西室泰三氏(東芝会長)
などで、その報酬額が1億円を超える高額所得者である。これらの人物は財界を代表する人であり、また、政府の主要な政策会議である経済財政諮問会議、規制改革会議、税制調査会、財政制度審議会、産業構造審議会、社会保障審議会等々の主要メンバーでもある。

 見方を変えれば、この人たちは消費税が100%になろうが、所得税の所得控除がゼロ(全廃)にされようが、既にそのことによる増税額を大きく上回る減税額を長年にわたって享受しているわけであり、それらの増税では痛くも痒くもない額なのです。

 所得税の最高税率引き下げによる減税額は、消費税導入以降2004年分までの累計額で22兆3369億円(筆者試算)という膨大な額になり、確定申告者だけでみた割合でも0.03%というごく限られた階層への恩恵となっています。

 収入の二極化の一方の側(高額所得者)への負担の減少は、財務省総合政策研究所の報告書でも「最高税率の引下げが格差を拡大している」と指摘されており、所得の再分配を損なっています。不公平税制の是正として早急におこなわなければならない喫緊の課題です。

 次に富山さんは、高額所得者の大減税のカラクリの一つとして、給与所得控除の不合理性を挙げている。

 所得税法では給与所得控除の規定は、収入180万円までは40%、30%、10%と所得階級別に割合を区分している。1000万円超の部分については5%であるが、上限の定めがない。つまり、収入額が多くなればなるほど多額の控除ができる青天井方式になっている。

 考えてみれば、多額な収入の人には企業の役員や高級官僚が多く、一般サラリーマンと比べ仕事にかかわる費用については企業で賄われていることもあり、給与所得控除の青天井は実態に反する不公平税制なのです。

 前回、大企業利益の分配が第1に役員報酬の急増となっていることを指摘したが、これを高額所得者の給与所得控除分の減税という観点から詳しく見てみよう。

 日産自動車役員の場合、平均給与所得控除を試算すると1651万円になり、平均的サラリーマンの給与の約4年半分に匹敵する額が控除されている。

 サラリーマン平均給与でみた給与所得控除額は年142万円で、月換算で12万円弱である(2004年分での試算)。それにひきかえ高額所得者トップの柳井正(ユニクロ会長)の場合は年収が29億3627万円あり、その収入で給与所得控除を算出すると、1億4851万円という膨大な額になる。サラリーマン平均年収の33.8年分という額が経費として控除されることになっている。この仕組みは給与所得控除が「青天井」になっていることによる不合理性に問題があることを示している。
「財源=税」問題を考える。(8)
消費税導入後の税制改悪(2)


 大企業や高収益企業は、不況期にあっても高蓄積を続けてきた。それではどのようにして利益を上げてきたのだろうか。

企業の税・社会保障負担における優遇措置

 当然のことに利益を上げている少数の企業と、とんとんか赤字の企業もたくさんある。その中で景気を引っ張ったのは輸出企業であり、海外進出企業が中心となって景気を持続させてきた。業種的にみますと、自動車、家電、情報産業である。

 経済産業省委託調査の「公的負担と企業行動に関するアンケート」で、生産拠点を海外移転する理由(複数回答)を問う項目がある。その結果は
1位 労働コスト84.7%
2位 海外市場の将来性65.1%
3位 取引先の海外移転47.6%
4位 その他のコスト42.8%
5位 税・社会保険料負担40.2%
であった。税・社会保険料負担は5番目であり、これを海外進出の理由とする意識は低いと言える。この企業の判断は、企業の税・社会保障負担の国際比較からも、妥当な判断であることが分かる。

企業の税・社会保障負担の国際比較

自動車産業
 日本   30.4%
 ドイツ  36.9%
 フランス 41.6%

エレクトロニクス製造業
 日本   33.3%
 ドイツ  38.1%
 フランス 40.2%

 日本では税・社会保険料の負担の面で、企業が優遇されていることが分かるとともに、海外進出企業が日本以上の税・社会保険料の負担をしても利益を上げている実態が裏づけられている。

リストラによる収益増

 財務省の法人企業統計をみても10億円以上の大企業は増収増益であっても人件費などの抑制により利益の蓄積を増やし続けてきたことが分かる。企業の人件費抑制策は、今では周知の事実となっているように、派遣労働者の拡大など正規社員から非正規社員への置き換えを急速に進めることであった。

 この大企業の意図を政治政策として、自公政府はいわゆる「規制緩和」を強引に押し進めていった。その結果、非正規雇用者は労働者の3人に1人という状況が作られ、大企業は3社に1社が最高益を更新するというバブル期の2倍を超える好決算を得ている。このような「安上がり労働者」を酷使する大企業の貪欲な儲け主義が今日の日本の社会や経済の由々しき破綻をもたらしたことも、今では周知のこととなっている。

 財務省総合政策研究所の報告書(2006年)によると、35歳以上の「中高年フリーター」が2021年には現在の3倍の146万人になると予想されている。そして「正社員になれないことで失われる可処分所得は年4兆4000億円で、名目GDP(国内総生産)を0.9ポイント押し下げる」としている。

高収益企業の利益の行方

 いざなぎ景気を超えるといわれた景気高揚の中で、大企業は莫大な利益を挙げていった。その莫大な利益は、そこで働く労働者の努力のたまものであるのに、労働者の収入は減少し、格差と貧困が拡大し、国民の生活は窮地に追い込まれていった。利益は確実にあがってるのに、2002年以降、大企業での労働分配率は連続して低下している。では、その莫大な利益はどこに消えてしまったのか。

 莫大な利益の行方は、大まかに次の三つに絞られる。

 役員報酬が急膨張している。

 株主への配当が急激に増えている。

 それで残ったものは内部留保として蓄積している。

1について
 役員報酬の2006年分1人当たり平均額
日産自動車  2億9623万円
ソニー    2億3757万円
住友商事   1億3897万円
コマツ    1億2914万円
マツダ    1億2666万円
トヨタ自動車 1億2088万円

2について
 2003年から証券優遇税制によって株式配当や株式譲渡益の税率が所得税と住民税を合わせて、それまで20%だったものが10%と半分になった。所得税最高税率は現在40%だから、高額配当者は4分の1になる大減税である。総合課税でみると、消費税導入前の6分の1という大減税になっている。この租税特別措置が引き金になって配当の支払い金額が急膨脹していった。

3について
 内部留保増加の要因は租税特別措置拡大と税率引き下げある。課税の公平という観点からみると、企業課税における最大の問題点は、儲けた額に応じた税負担をしないですむ仕組み(税制度)になっていることである。その仕組みは、大別して2つある。

(1)
 儲けのすべてを課税対象としない仕組みになっている。具体的には、
①費用でないのに費用として認める制度(利潤の費用化=引当金・準備金・特別償却)
②利益であるのに利益でないとして除外する制度(利潤の資本化=株式発行差金・受取配当益金不算入)
③資本を少なく見積る制度(過小評価)
④税負担の公平を著しく損なわせている制度(税額控除・外国税額控除・連結納税制度)
⑤税の執行上著しく公平を損なわせている制度(公益法人課税)


 利益を実際の額より過少にすることができる仕組みが、外国に比し日本にはあまりにも多いのが特徴的です。一般的にいわれる「課税ベースの縮小」(税額を計算する際の基礎となる課税所得)です。これら租税特別措置は利益を多く上げたものほど多額になり(利用できる金額が多くなる)、そのことによる減税額も収益に比例して多くなります。

(2)
 もう1つは、法人税基本税率引き下げによる減税策である。これは消費税を3%から5%に増税したことによる不況に対処するため「定率減税」や法人税の基本税率引き下げ、所得税最高税率の引き下げを1つの法律で決めたものだった。そかしその後、定率減税のみ廃止し、法人税基本税率や所得税の最高税率は同じ理由でありながら元に戻さなかった。それは高収益企業・高額所得者優遇の不公平税制の拡大であった。ここでも自公政府は国民を欺いている。

 消費税導入前には43.5%あった法人税率がその後数次にわたって30%にまで引き下げられた。これによって例えば、トヨタ自動車のような大企業はこれまで年間1兆円を超える高利潤を上げており、この場合減税額は1000億円を超える。前出の租税特別措置による課税所得の縮小では、2007年3月期で5747億7400万円(国公労連試算)もの減税となっており、それに税率引き下げ分が加算される大減税額となる。

 トヨタ自動車の儲けによる蓄積額(内部留保額)はこの期で、従業員1人当たりなんと1億2251万円にもなる。これを用いれば、トヨタ自動車の労働者の大幅賃上げが可能だし、また期間労働者、派遣労働者の首切りをしないですむ原資にもなるはずだ。

 品川正治(経済同友会終身幹事)さんが「昔の経営者は、儲かったものはまず従業員に配り、その余りを経営者がもらったが、今の経営者はその逆だ」と苦言を呈している。

 従業員が頑張って働いてくれたからこそ利益が上げられたのであり、役員だけで儲けたといわんばかりに役員報酬を巨額にしたり、株主への配当を倍増するなど、労働分配率を低くすることが一流の経営者と考えているような経営が最近とみに目立ってきています。

 「昔の経営者は儲けをまず従業員に分け…」の話をトヨタの経営者は考えてほしいものです。なぜなら役員報酬を1億数千万円も経営者はもらっているのですから。

 最後に富山さんは法人税に関連して、政府や官僚の出す資料を鵜呑みにしてはいけないという例を提示している。

 現在、法人税率は30%であるが、租税特別措置により課税所得が大きく減少することにより、税額は本来の利益に対して計算する税額とはかなり異なった額になる。しかし財務省で計算している実効税率は、租税特別措置による減税額を課税ベース(課税所得額)から除外し、減税分を少なく計算している。従って、財務省発表の実効税率は、実効税率を客観的に表したものとはいえない。

 租税特別措置によって実質税率がどれだけ下げられているかを示す試算(国公労連)がある。例えば大企業がほとんど採用している連結法人(完全支配関係にある企業グループを1つの納税単位とする)の場合、実質税率は1.7%と極端に低く、資本金100億円以上の法人も4.8%と財務省試算の28.0%、27.7%とは大きく開いている。租税特別措置が大企業にいかに有利な仕組みになっているかがよく分かる。

 強欲財界は、さらなる法人税率の引き下げ(30%→10%)を要求しているという。
「財源=税」問題を考える。(7)
消費税導入後の税制改悪(1)


 消費税導入という増税の大義名分は「高齢化社会のため」であったが、消費税が高齢化社会への対策に使われた形跡はない。消費税がその大義名分通りに使われれば、あの悪名高い後期高齢者医療制度などは全く不要だったはずだ。

 では、消費税は何に使われたのだろうか。消費税は一般財源に繰り入れられているのだから、それを特定することはできない。しかし消費税導入を契機に、総資本意志を全面的に取り入れて税制全般の改悪が推し進められてきた。むしろ消費税導入は税制度改悪のために導入されたのではないだろうか。消費税導入後の税制改悪の実態を見てみよう。(今回からは、『消費税によらない豊かな国ニッポンへの道』の第6章が教科書です。)

 公平で合理的な税制度の基本的理念は、従来は担税力に応じた「応能負担」であった。消費税導入後の税制改悪ではその理念を否定し、「税負担のフラット化が最も公平」と公平の解釈を変え、「応能負担」に代えて「応益負担」(受益者負担)を強引に打ち出してきた。これは、「既存税制の不合理な部分を殊更取り上げ、政府にとって都合のよい税体系に変え」ようとするものであった。(「部分より全体をおよぼす」という典型的な詭弁が臆面もなく使われている。)

 政府税制調査会などは、税負担をどう配分するかという考え方として、税負担が困難な人への個別調整を中心に置いたそれまでの考え方を捨て、垂直的公平(累進税率)から水平的公平(かつては同じ所得なら同じ税額という意味で使われましたが、所得額が違っても同じ税額という意味)へと、基本理念を一大転換させ、課税根拠のない「バランス論」や「広く薄く論」を前面に出してきました。

 公平という考え方にしても、税負担能力を基礎においた応能負担原則を重視し、企業活性化、国際競争力強化といった負担能力とは異なる次元での「公平」論ではなく、すべてのものに共通する客観性をもった公平概念を審議会の委員はもつ必要があります。

 これまでの制度の改廃理由を見ても、消費税導入後の反国民的改悪の数々は既存税制における創設趣旨を変更するための理由も述べずに一方的な考えを押しつけています。

 「公平・中立(活力)・簡素」という税制調査会の「理念」は、
「公平」とは、富める者も貧しき者も同額課税するフラット化をいい、
「中立」とは、所得の再分配や経済政策をほどほどにし、経済活動を重視する活力論です。
「簡素」とは、税率を適用する所得区分を少なくして高額所得者の税額を少なくすることをいっており、つまり「広く薄く」課税することを意味しています。

 さて、消費税導入後の税制改悪の実態を見ていくが、結論を先に言えば、消費税導入以来、一般庶民の税負担や社会保障負担(これは本来的には名を変えた税負担である)は増加の一途をたどってきた。その一方、高収益企業・高額所得者・大資産家への負担はどんどん軽減されていった。つまり、一般庶民の消費税・社会保障負担増は高収益企業・高額所得者・大資産家の負担減に使われたことが明らかになるだろう。

企業課税に見る高蓄積のしくみと実態

 自公政権は「企業の活性化」「国際競争力強化」を最重要政策課題とし、その大義名分のもと、全面的な規制緩和・多額の財政出動・高収益企業などへの大減税を繰り返してきた。その施策の結果、大企業はどれだけ儲けなのか、そしてその儲けはどこへ行ったのかを検証し、かつ高収益企業などへの大減税の仕組み(制度)を見てみよう。

消費税導入(1989年)以降の企業の内部留保額(儲けによる蓄積額)

全産業の内部留保額
1989年度 175兆9810億円
2006年度 411兆1077円
 235兆1267億円も増えている。この増加額は、この間の特例国債(赤字国債)増加額223兆1000億円を12兆267億円も超える莫大な額である。

 同じ期間における大企業(資本金10億円以上の企業)の内部保留額
1989年度 100兆3961億円
2006年度 228兆7578億円
 128兆3617億円も増えている。消費税導入時に比べ蓄積額の増加は約2.3倍になっている。

 全法人数に占める大企業の割合は、わずか0.28%である。消費税導入後に得た全産業の内部保留の55%を、そのわずかな大企業が独占していることになる。このことは法人間での較差が拡大していることを裏づけている。

 このように儲けの大企業への集中が進んでいる理由を富山さんは次のように分析している。(次回へ続く)

「財源=税」問題を考える。(6)
消費税の問題点


 消費税が導入されたとき、消費税の弊害や問題点がいろいろと指摘された。それが、消費税が当たり前のように定着されてしまった今、消費税の弊害や問題点はほとんど取り上げられることもなくなった。消費税の問題にかぎらない。時間がたてば国民は忘れるさ、と為政者たちはタカをくくっている。そして、だいたいその通りになっている。

 いま、マスコミでは、消費税そのものについての議論は全くなく、消費税率アップいたしかたなしとの論調が大手をふるってまかり通っている。そして、おおかたの国民もそれに同調する風潮が作られつつある。改めて消費税の弊害や問題点について復習しておかねばなるまい。

 消費税導入以前に、個別消費税として物品税や遊興飲食税という税金があった。これらは奢侈品課税であり、生活に直接必要のない贅沢な品物を購入したり、高価な飲食やサービスを受けた場合など、贅沢な品物やサービスへの課税であり、高額な支払いができる金持ち、生活に余裕のある人の担税力(支払能力)に着目したものである。もちろん、ガソリン税や酒税など、対象が金持ちとはかぎらない物品税もある。(私はかなりの酒税を納めている。)また、たばこ税のようなペナルティ(罰則)的な側面をもつものもある。

 これに対して一般消費税は、上記の物品税とは根本的に異なり、基礎的生活物品にまで課税される生活費課税です。生活必需品を含めた「消費」そのものに課税するというのだ。

 「消費」(物を買ったりサービスを受けたり)するのに、とうぜん先立つものは「お金」である。私たち一般庶民はその「お金」を労働によって得ている。その得た「お金」を払うことによって物を得、サービスが受けられることになる。つまり「消費」とは「所得」の処分形態であり、所得がなければ「消費」はできないのだから、「消費」自体が担税力(税金の支払能力)を持っているわけではない。消費税導入時の税制調査会は「消費に担税力を見出す」との勝手な見解を述べ、その課税根拠について説明していた。富山さんは「これほどことの真実を見失った(曲げた)理屈(理論)はありません。」と怒りをあらわにしている。

 ところで私たちは、消費をするための前提となる所得を得た段階で所得税を課税されている。そしてその所得で物品を購入する際にまた消費税という税金が課税される。これは完全な二重課税である。ガソリンや酒やたばこなどは個別物品税を含めた価格にさらに消費税が課税される。これは三重課税だ。

 現行税法では、二重課税の防止という名目で税額控除という負担緩和措置があります。例えば、それは企業から受ける配当所得に対する措置がそうです。これは会社が上げた利益に対し法人税が課税され、その残りの利益のうちから配当を株主に支払っているので、所得税の確定申告で配当所得をそのまま課税対象とし税金を取るのは二重課税であるから、その重複部分を調整するという考え方によるものです。

 しかし、よく考えてほしいのですが、配当所得は「所得」であり、他の勤労所得(事業・給与所得)より担税力はすぐれてあるという性質のものです。担税力のない消費には「担税力を見出し」、担税力のある配当所得にはなぜ負担調整をしなければならないのでしょうか。

 担税力の有無を別にしても二重課税には違いがなく、消費に対する課税も調整すべきではないでしょうか。とりわけ配当所得は金持ちに多く、消費税は貧しいものほど高い負担を負わされています。 「生活破壊税」ともいわれている一般消費税は課税の根拠がなく、本来あってはならない税金であり、選択ができ、生活に余裕のある人が払える形の個別消費税に戻すことがベターな制度といえます。

 ヨーロッパの付加価値税の歴史をみますと、その創設時の必要性は戦費調達と戦後処理が理由であり、戦費調達目的は日本も同様で、間接税共通のものです。「資本主義最後の税金」と導入時は叫ばれていましたが、最近では消費税「そもそも論」も問われることが少なくなり、話題の焦点は税率の引き上げの是非に傾注しています。それでは「のど元過ぎれば熱さ忘れる」のたとえに通じますし、社会保障財源という仮面に引き込まれてしまうのではないかとの懸念をいだかざるを得ません。

 一般消費税は、ヨーロッパモデルの付加価値税を模倣して導入されたものだった。(自公)政府は日本の消費税率はヨーロッパ諸国と比べて低いと喧伝してきた。税負担の国際比較の場合も政府は、自分の主張に沿った部分のみを拾いあげて資料を作り、国民に発表している。いや、国民を欺いている。では、その本家本元のヨーロッパにおける一般消費税の実際はどうなのだろうか。

イギリスの場合
 標準税率は17.5%と日本の約3倍強である。しかし、税率が3段階に分かれている標準税率17.5%・軽減税率の5%、それにゼロ税率というものがある。軽減税率5%が適用され るのは、家庭用燃料と電力で、ゼロ税率の対象は広く、食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍、国内旅客輸送、医薬品、居住用建物の建築、障害者用機器など生活に直接かかわるものや医療、教育、住宅などナショナルミニマム(最低保障)にかかわるものが消費税の対象からはずされている。

 消費税は生活費課税で、逆進的負担(貧しい者ほど高負担になる)であり、生活破壊税とも呼ばれている。イギリスではその重要部分がゼロ税率か軽減税率適用となっている。日本政府はこういう点にはほおかぶりをしている。

 私は今までは「税」については大きな関心を持たなかった。(いいかえれば、政府の発表を鵜呑みにしていた。)従って税制についての基礎知識も、全くと言ってよいほど持っていなかった。例えば、「基幹税」と「補完税」という概念も初めて知った。次のようである。

 税は新たに取得した所得への課税が基本であり、それを基幹税と言う。所得税、法人税がそれにあたる。
 そして、所得課税で補足されない部分を補完するという意味合いの税を補完税と言う。相続税・贈与税などの財産税がそれにあたる。

 さて、本質的に負担能力を持たない消費税を基幹税とするのは大きな間違いである。にもかかわらず、日本では、本来は補完税であるべき消費税が基幹税となっていて、法人税・所得税に次いで消費税が第3番目の歳入額となっている。それに対してイギリスでは、消費税率は日本の3倍強にもかかわらず、税収割合は日本より低い位置になっているという。イタリアも日本の4倍の税率だが、税収割合は日本より若干多い程度である。

 欧州連合(EU)は2008年11月20日、「欧州経済回復計画」を加盟国に提案している。それには、個人消費を後押しするために付加価値税の税率を引き下げることが盛り込まれている。イギリスやフランスも相次いで付加価値税の税率引き下げを打ち出している。

 日本においても食料品など基礎的生活物資の消費税をゼロ税率にすることにより、消費を上昇させる効果は間違いなく生じます。そして、そのことが若干でも所得格差を是正することにもつながることは間違いありません。

 消費税の不合理是正として当面おこなうべきことは、輸出に対する免税措置を廃止し原則課税とすること、大企業優位の課税売上高95%ルールを原則どおり課税・非課税に区分し原則課税することです。それだけでも相当な税収が確保され、社会保障財源として有効活用できます。

 前出の竹崎孜氏の著書によれば、消費税率が25%と最も高いスウェーデンでは、高い税率であることに国民からは反発が示されないとのことです。課税が国民の痛みとならぬ配慮があらかじめなされており、政策を通じた税金の還元が続いているから、単純な反対は出ないとのことです。また、「国民(基礎)年金は"暮らせる年金"の役割を果たしており、消費税負担が高い低いという問題ではなく、政府が長年にわたって所得格差や不平等の対策に取り組んできたことで消費税への批判は出ていない」と政府当局が説明していることも、紹介しています。

 この教訓は、日本も学ばねばなりません。ナショナルミニマム(最低保障)が不十分である日本の現状では、まず生活できる水準にまで収入を引き上げる体制を作ることです。

「財源=税」問題を考える。(5)
財界・自民党の「消費税導入」の執念


(今回からは、『消費税によらない豊かな国ニッポンへの道』の第3章が教科書です。)

 「経済財政諮問会議」の実態は、はからずも、ウソの言説にまみれた国家権力の裏面を白日の下に晒す役割を果たしている。私は『統治形態論・「民主主義」とは何か』で引用した秋山清さんの次の文章のリアルさを改めて確認したと思った。

「われわれは国家というものが、大衆の意志などとまるでまったく無関係な政府によって、政府をつくる政党によって、政府をバックアップする階級によって、資本家によって、官僚によって、あるいは地主らの総合的利益のためによって、つくられて運営されて、下級民衆にはそのための必要によってのみ支配の手が緩急されるという事実をあまりにも痛切に経験しつつある。」

 国家権力がリークする情報をただ垂れ流すだけのマスゴミ報道を鵜呑みにしている人たちは、日本は成熟した民主主義国家であり、上記のような認識は間違いだとのたまう。では、今度は税制という面から、ブルジョア民主主義のカラクリを見てみよう。

一般消費税導入までの経緯

 一般消費税が導入されたのは1989年(竹下内閣)だが、政府の消費税導入の動きは、それより10数年ほど前にさかのぼる。政府はヨーロッパモデルの付加価値税に着目し、それの日本への導入を策動し始めた。最初の具体的な動きは1978年にあった。

1978年 第1次大平内閣
 大蔵大臣金子一平が率いる視察団がヨーロッパ5カ国を訪問し、「ヨーロッパはうまくいっている」との報告書を出す。

1979年
 1月に、「一般消費税」導入を閣議決定するが、9月には遊説先で撤回する。(たぶんに総選挙対策)

1987年 中曽根内閣
2月に「売上税」法案を国会に提出。これまたその年の5月には廃案となる。(国民の大反発で、一応後退)

1988年 竹下内閣
 消費税法が成立(もちろん強行採決)、12月30日公布、翌年4月1日、消費税法(税率3%)施行

 強行採決されたのは「税制改革関連6法案」で、消費税法はその中の一つである。つまり消費税導入は単なる間接税体系の変革だけでなく、経済構造改革の1つとして、それまでの税制に対する基本理念そのものを変える税制全体の変革であった。

 それまでは曲がりなりにも能力に応じた負担(応能負担原則)を公平と位置づけて、税体系を形作ってきたのですが、それを壊していくのですから、別な理論づけをしなければならない必要が政府にはあったわけです。

 「明治以来の大改革」といわれる抜本改革の切り口として消費税が選択され、その後の直接税の大改革への道へとつながったのです。

 「応能負担原則」とは「別な理論づけ」作業の推進役を果たした諸団体は次のようである。

1985年10月
 財団法人「総合研究開発機構(NIRA)」が「21世紀に向けての公平・簡素・中立な税制の再構築」を報告。税負担のあり方の根本原則の変質化の指標を打ち出したもので、これが「別な理論づけ」の理論的支柱となった。石弘光元政府税制調査会会長がこの機構のメンバーであった。

 同じ年、自民党の要請を受けて「村山調査会」(自民党からは小泉純一郎・自民党税制調査会会長津島雄二などがメンバーになっている。)が「構造改革のための経済社会計画」を答申。

1986年
 日本租税研究協会税制基本問題研究会の「わが国の税制改革の基本的方向 ― 民間の自主性と活力ある税制のあり方を求めて ―」(橋本・吉牟田試案)を報告。

 以下列挙すると
●現代総合研究集団租税政策部門「経済政策への提言」
●経済団体連合会「行財政改革と税制の根本改革について」
●日本経済研究センター「税制改革への提言」(1986.4)
●日本租税研究協会「わが国の税制改革の基本的方向(1986.5)
●経済団体連合会「税制根本改革と62年度税制に関する意見」(1986.9.24)
●経済同友会「税制の抜本的改革について」(1986.9.19)
●政権構想フォーラム「税制改革案のシミュレーション」(1986.9)
●不公平な税制をただす会「国民のための税制改革」(1986.9)
● 関西経済連合会「税制改革のマクロ経済分析」(1986.10)

 これらを受けて、政府の消費税導入は性急かつ強引に進められた。

1988年3月28日
 政府税制調査会「中間答申」
同年6月15日
 「税制改革についての答申」
同年6月28日
 「税制改革要項」を閣議決定

 また、この間に自民党も「税制改革の基本方針」、6月28日には「税制の抜本改革要綱」を並行して出している。

 自民党・財界・御用学者が一丸となって、すさまじいまでの答申・報告の嵐である。これらを大義名分として、1988年の「税制改革関連6法案」強行採決であった。

 一連の答申・報告の底流にある基本的な狙いを、富山さんは次のように鋭くえぐり出している。


 税制(負担)に対する国民の考え方を変える。

 審議会、民間団体を隠れ蓑に答申や提言という形をとって国民の意見を取りまとめたように体裁を整える。

 業界団体や納税協力団体を巧妙に取り込む。

 もちろん、この消費税導入の動きに対して、すぐさま国民の大反対の声が上がった。それに対応するため政府は修正の手を打たざるを得なくなっている。しかしそれは単なる目くらましであり、政府は長い時間をかけて初志を貫徹していく。
 1988年6月28日閣議決定の「税制改革要項」の試算では、消費税創設により、4兆3540億円の税収増となり、既存間接税の廃止による減収は2兆3300億円で、その差は2兆240億円の増税になるとの試算結果を出しました。しかも、その増税の大半を中低所得階層が新たにかぶることになることは、当時の筆者の試算でも明らかでした。

 そこで政府は、レベニューニュートラル(増減税ゼロ論)での調整を図り、消費税増税に対する負担調整策として出されたのが、所得税率の引き下げ(最高税率の引き下げ)、税率適用区分緩和(最低税率10%適用所得階層の範囲拡大)、課税最低限引き上げ(諸控除の拡大・創設)などでした。

 この消費税増税に対する負担緩和調整のための措置について、後年「不合理」としてそれらの大半を改廃し、さらに課税強化していますが、それは消費税創設当時の公約を反故にしたものであり、明らかな公約違反です。消費税導入時の中小事業者に対する負担緩和措置を廃止に追い込んでいるのも諸控除同様「不合理性」をあげており、政府の租税政策は力のあるもののみ優遇し、一般国民を欺く「税制改悪」の歴史をたどっているといえます。

 政府・税制調査会の税負担配分に対する「考え方」は、景気対策と結合した大企業擁護の企業活性化論、市場原理に基づく受益者負担論の強調、公平・中立(活力)・簡素化論を軸として、すべての負担(税・社会保障)体系を中低所得階層に重く、大企業・高額所得者・資産家に軽いものに変えようとするものです。

 これまでの租税民主主義における公平原則の応能負担原則から国・地方自治体から受けるサービスへの受益者負担・応益負担原則へとの大転換であり、それら反国民的税負担配分論議の発生源は財界であり、それを受けて政治方向を変えた自民党政権の本質がこれほど明確に出ているのも歴史的にみて特筆すべきものです。

 元政府税制調査会会長の加藤寛氏は週刊誌で、「(消費税導入時は)高齢化社会のためといわれ、われわれ税調もそう説明したが、本当はああいえば一般の人に分かりやすいから」とホンネを語っています。政府は「将来国民2人で1人の老人を養わなければならない」と増税の口実にあげて宣伝していましたが、それが理由ではなかったことを明言しています。「小さく生んで大きく育てる」ともいっていた消費税が今また同じことを繰り返させられようしています。

「財源=税」問題を考える。(4)
小泉悪政の推進機関「経済財政諮問会議」


 各種審議会の中で特に、総資本意志を全面的に取り入れて、得意になって国民生活破壊のつゆ払い役を果たしたのが内閣府の諮問機関である経済財政諮問会議(以下、経財会議と略す。)であった。

 経財会議は、中央各省の再編に伴って設けられた機関で、森内閣時にスタートした。しかし、森内閣時にはほとんど機能していなかった。これを引き継いで、小泉内閣が全面的に活用する。小泉内閣は、予算編成(経済財政政策)の基本骨格を決める権限、いわば国家運営の基本の決定権をそれまでの財務省から奪い取って経財会議に移した。そこで、いわゆる「骨太方針」と呼ばれている「経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」が作られた。

 経財会議のメンバーの11人で、4割以上は民間有識者にしなければならないとされている。総理を議長とし、閣僚5人(内閣官房長官・経済財政政策担当大臣・総務大臣・財務大臣・経済産業大臣)・民間人5人という構成になっている。ところが民間有識者5人が曲者である。その内訳は財界人2人・学者2人・日銀総裁である。4名の民間有識者の顔ぶれを見ると(先の2人が財界人、後の2人が学者)

小泉内閣時
奥田碩・牛尾治朗・本間正明・吉川洋

安倍内閣時
御手洗冨士夫・伊藤隆敏・丹羽宇一郎・八代尚宏

福田内閣時
張富士夫・三村明夫・岩田一政・吉川洋

 財界トップ・財界有力者と、学者はいずれもいわゆる御用学者。結論ははじめっから決まっているようなものだが、念のためその政策決定過程を概観しておこう。

 まず日本経団連が政府に対し「提言」をおこなう。→その「提言」を受けて審議の初回に民間議員の4人が共同で審議方向を提案する。→閣僚はそれに同調し、審議に入る。
 つまり、日本経団連の「提言」に即して民間議員が共同提案をおこない、まとめにあたってもその方向をやはり民間議員が共同提案する。いずれも民間議員が審議をリードしていく形をとっている。審議結果はほぼその線でまとめられる。なんのことはない、財界の財界による財界のための審議である。

 そこでまとまったものは、ほぼ無修正で閣議決定という段取りで政策が決められていく。それが法案化され、国会に提出される。あとは強行採決あるのみ。この審議会も、民間の意見を取り入れたというポーズを取るための欺式に過ぎない。この経財会議の問題点を、富山さんは次のように指摘している。
 国のもっとも重要な政策会議であるこの経財会議と規制改革会議には労働組合も排除されており、真の国民の代表が1人も入らない中で重要な政策が決められているのです。そして、日本経団連の「提言」の基本的要望などかなりの部分が政策化され実現されていくのです。

 このプロセスについて竹中平蔵氏は次のように「喝破した」ことが、五十嵐仁著『労働再規制―反転の構図を読みとく』(筑摩新書)に紹介されています。それは、「事前の『裏戦略会議』で入念に仕込んだ民間議員(の提言)をペーパーで切り込み、議論が二歩前進、一歩後退しながら熟してくると「竹中取りまとめ」で後戻りできないようにピン留めする。最後は『小泉裁断』で決着する。この3点セットで抵抗する各省や閣僚を追い込み、諮問会議を官邸主導の政策決定メカニズムのメーンエンジンとしてフル稼働させた(清水真人『経済財政戦記』49頁)」です。

 しかし、よく考えてみますと、これら政策決定については国会がこれまで担っていたものであり、自民党議員の中からは「俺たちは何なんだ」との声が出ていると伝えられています。また御手洗日本経団連会長が「提言」を実現させるために毎日のように政府機関に電話をしているとの話や自民党税制調査会の幹部に御手洗会長が電話した際に、「そんなことばかり言っていると国民は黙ってはいませんよ」と諭されたという報道がされています。

 経財会議は内閣府の諮問機関であり、内閣府は行政機関です。その行政府が立法府の国会の審議権を侵害して政策決定をしているという構図です。それは明らかに、立法・司法・行政の三権分立を規定している憲法にもとることにもなり、憲法違反とも考えられます。

 とりわけ問題にしなければならないのは、これらの審議会の多くは真の国民代表を参加させておらず、財界、大企業の役員により審議・決定し、その中身は反国民的報告や答申となって政策化されていることです。それは、民主主義に反し、問われなければなりません。この構図は、まさに財界などごく一部の階層が、日本を私物化しているものといえるのではないでしょうか。

 三権分立は議会制民主主義(ブルジョア民主主義)の根幹であり、その最も良質の部分である。最高裁判事を筆頭に圧倒的多数の裁判官は、憲法判断を迫られるような事例では行政追認の判決しか出せない。司法はとうに劣化している。その上に立法府(議会)までが行政府(政府)の支配下に入れば、ブルジョア民主主義の根幹が崩れたことになる。

 この状況は「ブルジョア民主主義国家」→「専制国家」という後退のへの一歩手前であることを示している。しかし、このような観点から現況を論じている人は、私の知る限り、佐藤優さんだけである。(8月31日付東京新聞夕刊コラム「放射線」)
権力党

 昨日の衆院選で、民主党が圧勝した。しかし、筆者はこれを民主党の勝利とは考えない。それでは誰が勝利したのだろうか? 筆者は、真の勝利者は小泉純一郎元首相と考えている。 2001年4月の自民党総裁選で、小泉氏は「自民党をブツ壊す」という公約をかかげた。その公約が8年4カ月後に実現したのである。権力は空白を嫌う。自民党が崩壊した隙間を、民主党が埋めたにすぎない。その結果、真の「権力党」が生まれた。

 政党を英語で「ポリティカル・パーティー」というが、パーティー(PARTY)には部分という意味がある。社会にはさまざまな利害対立がある。その社会の部分を代表するのが政党だ。部分の代表者が議会で討論し、合意を形成するというのが議会制民主主義の基本だ。

 ただし、権力党はこのような政党ではない。権力党は部分の代表ではなく全体の代表であるという自己意識をもっている。

 具体例ではソ連共産党がこのような権力党だった。権力党は事実上、国家と同じ機能を果たす。これは民主主義にとって危険だ。

 政党は、民の側から形成された社会団体である。政党の機能は、合法的な暴力を独占する国家の活動をチェックし、その暴走を抑制することにある。ところが全体の代表を志向する権力党の場合、国家と一体化してしまうので国家に対する批判機能が低下する不安がある。民主党に対する世論のチェックがこれから重要になる。

 今回の選挙結果について、今のところ財界は事の真相を把握できず、ただただ戸惑っているばかりのようだ。(今朝の東京新聞の記事「戸惑う経団連 民主対応で臨時会合」)

 民主党が圧勝した総選挙結果を受け、自民党と蜜月時代を築いてきた日本経団連が、新政権にどう向き合えばよいのか苦慮している。御手洗冨士夫会長は「経団連の姿勢、行動形式は変わらない」と平静を装ったが、新政権との距離感はつかめていないのが実情だ。 (花井勝規)

 2日午前、東京・大手町の経団連会館で、御手洗会長が急きょ招集した臨時幹部会議が開かれた。15人の副会長のうち約十0人が駆けつけ、病気療養で主要行事を4カ月間休んでいた中村邦夫副会長(パナソニック会長)も出席した。

 「正しいと思うことを堂々と(新政権に)言っていくしかない」「(民主党政権へ)急旋回はできない。慎重にいこう」。自由討論の形で行われた会議では、基本原則の確認に時間が費やされた。「まだ政権が発足していないし、(鳩山次期首相の)所信表明の中身も見えない」(御手洗会長)ためだ。

 だが、温室効果ガスの削減目標をめぐっては、「もし(国際的に)約束でもされたら、一大事だ」といった意見が出た。民主党は2020年までに1990年比25%削減を目指すとの方針を掲げている。これに対し経団連など産業界は、目標が高すぎるとして強く反対している。

 首相となる鳩山由紀夫氏は今月22日、ニューヨークの国連本部で開かれる気候変動ハイレベル会合に出席する方向。この際、鳩山氏が具体的な削減目標を口にすれば、「国際公約になりかねない」と経団連側は懸念する。

 産業界からは鳩山氏の"口封じ"を経団連に期待する声が強まっており、幹部会議では「公式、非公式、個人などあらゆるルートで民主党にお願いしよう」との声が出た。ただ、幹部の中には「308議席を獲得した政党と正面からぶつかれば国民を敵に回しかねない」との異論もあり対応は揺れている。

 現在の状況が自らが掘ってきた墓穴であることにも気がつかず、従って反省の言葉は一言もない。ただただ儲けだけを追い求めている経営バカであることをさらけ出している。

 この関連記事に御手洗経団連会長へのインタビュー記事が併載されている。一部引用しておく。

―民主党の経済対策については。

「民主党の公約は所得再配分で市場を刺激し内需拡大を図るものだが、少子高齢化の中では限界がある。外需も視野に入れ、内外需バランスの取れた政策を期待したい。アジアとの経済統合推進など外需を取り入れた成長戦略はあると思う」

―民主党の中には経団連の名を挙げ、政・官・財の癒着構造を指摘する議員もいる。

「別に癒着しているとは思っていない。癒着と呼ばれるような時代は三十年前に終わっている

 こりゃ、だめだ。
「財源=税」問題を考える。(3)
各種審議会の仕組み


(やっと本題に入ります。『消費税によらない豊かな国ニッポンへの道』の第5章を読みます。)

 少数派のブルジョア階級だけでは、もちろんブルジョア独裁を貫徹することはできない。議会制民主主義という建前民主主義に他の諸階層諸階級の相当数を取り込むことが必須の条件となる。1970年代、高度経済成長のおこぼれに預かって、一億総中流化時代と呼ばれた頃まではその戦略は功を奏していた。「議会制民主主義=真の民主主義」という誤解がしっかりと根付いたのもこの頃だったろうか。

 一方、被支配階級の抵抗権の弱体化に成功した支配階級(政官財)は傲慢となり、議会制民主主義(ブルジョア民主主義)の本質を忘れ去り、他の諸階層諸階級をないがしろにした。その誤謬の根源は「イデオロギー(階級対立)の終焉」という妄論にあったろう。特にこの10年間は他の諸階層諸階級を徹底的に痛めつける国家意志を強引に押し通してきた。今回の総選挙における自民党・公明党の惨敗の真の原因はその点にある。そういう意味では今回の総選挙の結果は革命の始まりと言ってよいかも知れない。

 とはいえその間、支配階級は他の諸階層諸階級を全く無視していたわけではなかった。国家意志を貫徹するための通過儀礼として、支配階級は被支配階級の要求(民意)を取り込むポーズだけはとり続けていた。その最たるものが、小泉が始めたタウンミーティングという擬式である。やがてそれがまやかしであることが、安倍が強行した教育基本法改悪時の「やらせタウンミーティング」で明らかになった。

 小泉による悪政・「構造改革」は小泉内閣時に唐突に出てきたわけではない。それ以前から伏線は引かれていた。ここ10年ほどの、自公による国民生活破壊の過程を簡単に振り返ってみよう。

① 1997年橋本内閣
 「変革と創造」6つの約束(行政委員会最終報告)
② 1999年小渕内閣
 「日本経済再生の戦略」(経済戦略会議最終報告)。現在その禍根がいよいよ明らかになってきている周辺事態法(日米ガイドライン)・憲法調査会設置法・国旗国歌法・通信傍受法・住民票コード付加法(国民総背番号制)などの悪法はこの内閣の手になることを忘れまい。
③ 2000年森内閣
 「経済構造の変化と創造のための行動計画」(IT戦略会議)の3つの歴代内閣における基本戦略の実行を約束。首相就任最初の所信表明演説で、「処方箋はすでに示されている。私が成すべきことは、決断と実行であります」と述べている。
④ 2001年~2006年小泉内閣
「構造改革の考え方一活力ある経済社会の創造」によって、「市場プログラム」のもと広範な政府業務の民間委託化の道が開かれた。具体的にまとめると次のようである。

(1) 規制改革
 規制緩和「官から民へ」の構造改革特区(民営化、民間委託、市場化、道路公団、郵政公社など)
(2) 税制改革
 持続的な経済社会への活性化
(3) 歳出改革
 簡素で効率的な政府(歳出の質の改善と規模の抑制)
(4) 地方の自立・活性化
 「国から地方へ」、補助金・交付金・税源配分の三位一体化(地方分権と称する財政の集権化は捨てない)
(5) 日本の魅力の再生
 観光振興、都市再生、対内直接投資
(6) 暮らしの構造改革
 食の安全確保、世界最先端のIT国家など
(7) 持続可能な社会保障制度
 給付と負担のあり方、持続可能な年金、医療制度など(社会保障制度のスリム化、企業の社会保険負担軽減 ― 民間保険会社の業務拡大)

 歴代内閣における基本戦略に共通しているのは、いわゆる「小さな政府づくり」と「規制緩和」を中心とする「構造改革」であり、それが小泉内閣によって集大成化された。字面はきれい事が並んでいるが、その実態はこの国の惨憺たる現状が如実に示している。

 また、もう既に周知のようにこの「構造改革」は、アメリカ・財界から指示を受けて政策化されたものである。「小さな政府」を目指す政策目標を改めて列挙すると

 政府がやっている仕事を民間に移す(民営化、民間委託など)

 社会保障制度のスリム化をおこない、民間企業の税・社会保険料の負担を軽くする

 政府の仕事を縮小させることによって、民間企業の活動の場を広げる(健康保険の縮小による民間会社の業務分野の拡大など)

 また、今日の派遣切りなどを生み出した元凶の規制緩和の基本にある考え(新自由主義・市場至上主義)は次のようであった。企業が儲かるような経済構造にするためには企業の手足を縛ることなく、企業に自由に活動させる方がよいとし、そのためにはまず何よりも規制緩和が必要だとした。労働に関する規制緩和を例にとれば、橋本内閣、小泉内閣ともに、労働者派遣法の規制緩和をおこなうなど、労働の規制緩和に精力的に取り組んできた。

 さて、「国民各層の意見・要望を行政府に反映させる」という建前で設立されるが、実態は総資本意志の全面的取り込みを行っている曲者がある。各種審議会である。全体像が分からないほどたくさんある。その数はおよそ百数十といわれている。また、小泉内閣発足時に30余が新設されたと伝えられている。開店休業状態のものや大臣の私的懇談会なども含めると、一体どれくらいになるのだろうか。以下は、2004年に小池晃参議院議員(日本共産党)が資料請求して明らかにした各種審議会の実態である。

 政府の各種審議会で2つ以上兼職している委員が12省庁所管の委員1760人(定数の合計)の中で延440人おり、4人に1人にのぼる。この実態は明らかに「国民各層の意見・要望を行政府に反映させる」という審議会設置の目的から大きく逸脱している。

 兼職委員の多くは、経済および産業に関する事項について論議する産業構造審議会(経産省所管)で委員27人中19人(70・4%)もおり、兼職先は、中央教育審議会、社会保障審議会、財政制度審議会など各省庁の主要審議会にわたっている。3つ以上兼職している委員は166人で全体の9・4%、内4つ以上は45人もおり、最も多いのは木村孟大学評価学位授与機構長の中央教育審議会長(当時)の5つだった。

 財界代表では、奥田碩(トヨタ自動車相談役)日本経団連会長(当時)は4つを兼職、森下洋一(松下電器産業会長=当時)税制委員会委員長も4つ兼職していた。全省庁の審議会予算(2004年度)の委員報酬額は11億6400万円にのぼり、委員の最高報酬額は宇宙開発委員会(文化省所管)会長の月額131万7000円である。当然、兼職が多いほど受け取り報酬額も増えることになる。