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第739回 2007/02/27(火)

《吉本ファシズム論より》:社会ファシズム(7)


 中野が「国家改造計画綱領」を書いたのは1933(昭和8)年だった。 その後、大日本帝国は戦争拡大の方向に大きく傾斜していき、農本 ファシズムのイデオロギーが大勢を制していった。東方会も その大勢に追従して、ブルジョワ独裁論から農本ファシズムの戯画的 な部分と大差のないイデオロギーを奉じたファシスト政党へと 逸脱していった。その戯画的なイデオロギーは1939 (昭和14)年、 に発表された『仝体主義政策綱領』(中野正剛、杉森孝次郎編著) に盛り込まれることになる。

東方会綱領

一、正義国際の建設により国民生活の活路を開拓すべし。
一、国際非常時の克服に傾注し、全国民均等の努力と犠牲とに愬ふ べし。
一、政治によりて広義国防を担任し、軍部をして安んじて狭義国防 に専念せしむべし。
一、生産力の急速なる拡大強化を目標として統制経済の動向を是正 すべし。
一、全体主義に則り、階級的特権と階級闘争とを排除すべし。
一、農民、労働者、中小商工業者、俸給勤務者の生活を保障し、国 家活力の源泉を涵養すべし。


 ここで、中野正剛の国家統制を基本とするブルジョワ独裁論は、 政治的イデオロギーとしての全体主義に統一された。

 東方会における全体主義イデオロギーの根底は、北一輝の改造法 案とおなじように低俗化された社会有機体説であり、国家を全体と すれば、人民はその分肢であるから、国家の発展は分肢の発展であ り、分肢の発展は国家の発展であり、しかるがゆえに公益と私益と は矛盾するものではないという論理によって国家全体主義の合理化 が行われた。

 国家そのものにたいする科学的な省察はすこしも行われず、アプリ オリに至上権があたえられたばかりか、全体と分肢というかたちで、 幻想的な共同性は、個人をその歯車のひとつの位置におきかえたと いうことができる。

 戦後、全体ということばが組織ということばにかわって、組織と 個人とは矛盾するものではないとか、組織という観点なしには批評 は成り立たないなどという論理が展開されたことがあるが、もとよ り社会ファシズム理論の焼き直しにしかすぎない。そこでは、個的 な意志の共通性として、組織ははじめて意味をもつにいたるという 観点は、まったく存在せず、典型的なファシズム組織論、国家論が 行われているのである。


 昨今の保守反動政治家・幇間評論家や御用学者の言行の其処此処に、 このような未熟なイデオロギーの残滓が露呈している。 彼らにとって個人は国家の歯車に過ぎない。ただし、彼ら自身は その「歯車」の中に含まれていない。

 さらに東方会ファシズムは、上記のような国家全体説を情勢的 に意味づけるため、日本を特殊的全体的国家と規定する。

A、 土地を要件とする。膨脹はよいが縮小はゆるされない。八紘一宇 の大精神であり、建国以来の信念である。
B、 臣民を要件とする。減少をゆるさない。生成発展、弥栄え行く は、日本民族の信念である。
C 万世一系である。絶対である。
D 目的は八紘一宇。変更あるなし。


 すでに、理念としての東方会イデオロギーは、昭和8年の中野の ブルジョワ独裁論をさえ逸脱し、ほとんど農本ファシズムの戯画的 な部分とのイデオロギー的な差別はなくなってしまっている。

 このようなブルジョワ独裁論からの退化は、東方会の農民連動方針 と労働政策方針のなかに、いちじるしくあらわれた。

 東方会の農民運動は、建国の精神に基づき、民族の伝統に則っ て、共産主義、社会主義、自由主義的農民運動を排撃し、全体主義 的共同社会を建設することを目標とするというように、中野の綱領 は改変され、天皇制の絶対不可侵が主張されるとともに、中野の国 家統制によるブルジョワ独裁論は、

「高天ヶ原の神話社会を二一十世紀に於て現代の工業文明を内包し たまま再現することである。我々は資本主義の欠点を攻撃するが、 決してその長所を否定するものではない」(稲村隆ー)

というような、文化ファシストのユートピア論をうらづけるにふさ わしい方針におきかえられたのである。


 東方会文化ファシストたちは戦後も生き残り、「われわれは戦時 下も農民運動をつづけ、労働者の体位、健康の保全を主張すること によって抵抗した」などという詭弁をまき散らして抵抗者面をして 居直った。

 例えば、「全体主義労働政策並びに運動方針大綱」(1939 (昭和14)年) のなかの次のような項目をアリバイに掲げる。

一、労働者の体位を低下し、健康を損傷し、労働力を減耗し、労働力 の再生産を妨ぐる労働強化に反対し、労働時間を合理的に制限するこ と。
一、物価の変動を考慮に入れた弾力性のある最低最高貸金の制定。
一、失業及失業不安に対し、労働需給の強制統制、合理的失業保険の 実施。「臨時工及人夫制の廃絶。
一、出征軍人遺家族援護の制度化。
一、労働技術養成機関の普及。
一、地域的に労働大衆の修養・娯楽機関の設置。
一、労働者住宅医療機関の常備。
一、労働紛争議調停最高機関としての労働裁判所の設置。
一、労働団体の法認。


 この擬似ナチズム的な項目のいずれも、それ自体として不都合を 含むものではないが、これらはいずれも労働着の階級的な観点から 主張されているのでもなく、ヒューマニズムの立場からの方針でも ない。全体が発展するためには、分肢の労働力を保全し、労働力の 再生産プールを健全に保たねばならないという倒錯したニヒリズム の観点によって主張されているにすぎず、実質的には、ブルジョワ独 裁を強化発展させるために、労働力の保全を強調しているにす ぎない。

 ここに、東方会ファシズムによって戦時下主張された、資本制生 産の枠内におけるユートピア確立論の本性があつたということがで きる。

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